
院長の山本です.
今回は,口腔細胞診についてお話します.(口腔がんについて part 1~3も是非お読みください)。今回の情報も今まで通り一般の方(患者さん)向けではありますが,一般歯科診療所の先生方やスタッフの方にも是非読んでほしい内容になっています.
患者さんは,口内炎が長期間治らなかったり口の中にできものが出来たりしたとき,歯科医院を受診すると思います.そのときに,視診・触診で経過観察【「多分大丈夫だから様子見てください」や「とりあえず塗り薬出しておきますね」など】となるとどう感じるでしょうか? おそらく,多くの方は信頼している先生に診てもらったから大丈夫だろうと思うと予想します.
上記のやり取りの中で,先生がその病変の性状を分かったうえでの判断であれば全く問題ありませんが,良くわからないからとなれば話は違ってきます.
経過観察とは『現時点では対応せずに状態を経時的に観察すること(軟膏・抗生剤を併用)』です.良性病変であることが大前提であり,よくわからないから経過観察というわけではありません.もしも,その症状・病変が悪性になりえる状態であれば,経過観察をしている場合ではありません.良くわからない,もしくは悪性の可能性(がんもしくは前がん病変 / 状態)が少しでも考えられる場合は,検査をするべきなのです.
「口腔がんについて」のブログでも少し触れていますが,口腔は解剖学的に目視可能な領域で,早期発見が可能な部位であるにも関わらず,口腔がんの死亡数は増加し続けています.実際,頭頚部癌取り扱い規約第6版によると早期発見がなかなかできていない現状がわかります.
上記で述べたように,根拠のない経過観察期間がないことと粘膜疾患(口内炎やできもの)への検査が普及すれば,口腔がんは早期発見が可能で,死亡数は減少傾向に向かうと思われます.
それを解決するものが口腔細胞診です.口腔細胞診が普及すれば,多くの一般歯科診療所で口腔細胞診の検査ができ,口腔がんの早期発見が可能になるでしょう.細胞診は安価で,患者さんへの侵襲が少なく,手技が簡単で,スクリーニングとしてはとても優秀な検査です.
次回は,主に一般歯科診療所の先生方向けに口腔細胞診のやり方についてご説明していきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます.
お口の中のできものや口内炎がなかなか治らない方がおられましたら,是非ご連絡ください.