院長の山本です.
今回は,口腔がんについてお話していきます.
口腔がんは,口の中にできる悪性腫瘍の総称です.口の中は解剖学的に,舌,歯肉,頬粘膜,口蓋などに分類され,それぞれの場所でがんが発生します.部位別では『舌がん』が最も多く,次に多いのが『歯肉がん』となります.
口腔がんは全身にできる悪性腫瘍の約1~3%程度であり,人口10万人あたり6名以下の『希少がん』にあたります.そのため,ほかのがんと比較してその認知度は低くピンとこない方も多いのですが,実際は罹患率・死亡率ともに増加し続けており,30年前と比較し3倍以上になっています.
高齢化が進み,口腔がんを含むがんの罹患者数は増えることは容易に想像できますが,死亡率が増加し続けることはよくないことです.日本において,口腔がんの死亡率が増加し続けている背景に,二つの要因があると考えています.
一つ目が,口にがんができるということを知らない.要は認知度が低いということ.それに加え,かかりつけ歯科を持たず,歯科医院への定期健診を受けている方が少ないことが考えられます.一般社団法人口腔がん撲滅委員会のホームページによると,アメリカでは半年に一度の口腔がん検診が義務になっているようで,日本では軽症の段階で来院せずに発見が遅れることが大きな要因と思われます.
二つ目は,口腔がんの初期病変は口内炎や歯周病などと間違われやすく,発見するのが難しいということです.口内炎は,一般的に経過観察か塗り薬の処方で終わるケースがほとんどですが,その中に初期の口腔がんが紛れている可能性があります.
一つ目の要因を解決するためには,歯科医師会そして県や市単位での口腔がんについての啓発活動が重要になります.日本人の口腔に対する考え方を少しでも変えることができれば,早期の段階で発見することができる可能性が高くなり,死亡率を低下させることができるでしょう.
二つ目の要因を解決するのがなかなか難しいと考えます.口内炎と初期の口腔がんを視診や触診で判定することは困難であり,歯科医師の経験や勘に左右される主観的なものになります.
そこで,二つ目の要因を解決する為に,『細胞診』という検査をおすすめします.
細胞診は,口腔がん早期発見をサポートする素晴らしいツールと考えています.
次回は,細胞診について詳しくお話していこうと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.